昔あるところに貧しい男がいました。
その男の取柄は正直なことくらいでした。
やっとのことで仕事を見つけ、
ささやかな日々に感謝しながら
暮らしていました。
![](https://fukui-hypno.com/1fr-l16oe3wx/wp-content/uploads/2020/07/7acbade1064fac0eb95819c1856ad20b.jpg)
ところが、ある日突然重い病気になり…
もうすぐ死ぬと医者から宣告されました。
仕事も出来なくなり、友人さえも
その男から去っていきました。
男はすべてを失ってしまいました。
暗がりの中でただ泣き続けました。
その時男は言葉にすればこんなことを考えて
いたのかもしれません。
(どうして僕がこんな目に合わなくちゃ
ならないんだ。何か悪いことしたのかよ!)
もちろん、その怒りと悲しみと絶望は
誰にもどこにもぶつけることが出来ません。
男はただただ一人で泣き続けました。
![](https://fukui-hypno.com/1fr-l16oe3wx/wp-content/uploads/2021/11/22595438_s.jpg)
その時です。
ひとすじの白い光が男の胸に入ってきました。
「生き続けなさい。」
確かに声が聞こえたのです。
一体誰の声なのでしょう?
温かな、しかしはっきりとした声でした。
「ありがとうございます。ありがとう。
ありがとうございます。ありがとう……」
男は歓喜の涙でその光に応えました。
![](https://fukui-hypno.com/1fr-l16oe3wx/wp-content/uploads/2021/11/22867531_s.jpg)
もちろん、男の病気は治りませんでした。
仕事も出来るようになりませんでした。
しかし、その日を境に男が自分の身を
憐れんだり嘆いたりすることは一切ありませんでした。
男はその声を神様の声だと信じました。
毎日会話をし、言われた通りにしました。
男はとても幸せでした。
自分が神様に愛されているということを
疑うことは全くありませんでした。
それから男は病気と共に何年か生きて
ある日突然亡くなりました。
![](https://fukui-hypno.com/1fr-l16oe3wx/wp-content/uploads/2018/03/34a08f6f3922664e8367a9520b1187df_s.jpg)
天国に着くと神様が待っていました。
男が毎日会話していたあの神様でした。
神様は男を抱きしめ、こう言いました。
「お前はよくやった。
生きているうちに自我を捨てたのだ。
捨てたからこそ私と直接的に繋がった。
ほとんどの人間が成しえないそれをした。
それがお前の望みだったからだ。」
![](https://fukui-hypno.com/1fr-l16oe3wx/wp-content/uploads/2019/08/ec22b10a1ed66fbee9814447a41bc4ad_s.jpg)
「それが私の望みだったですって!」
男は驚き、そしてすべてを理解しました。
さらにさらに男は幸せを感じました。
辛かったあの人生のすべての出来事が
一つ残らず必要なことだったと悟ったからです。
おしまい