「君は一人で何でも出来るようになったなぁ」
洗濯物を取り込むことぐらいしか
出来なくなった夫が感慨深げに言います。
「そりゃそうだよ!一人になっても
大丈夫なように頑張ってきたもん!」
私も言います。
5年前の夏、夫に悪性脳腫瘍が見つかり
手術しなければ余命3か月、しても
5年生存率20~30%と言われました。
青天の霹靂とはまさにこのことかと
いうくらい驚き慌てました。
それまで夫に頼りっきりだった私は
完全にパニックになりました。
(私も死のう・・・)
そんなことも本気で考えていました。
夫のいない人生は考えられなかったのです。
私は一人になるのが怖かったのです。
夫と結婚した時に、これまでの淋しさは
やっと終わったと思っていたのに。
また一人になってしまうなんて・・・
なんて人生はむごいものなのだろう・・
しかし・・・
時間というものは偉大ですね。
人生にはどうにもならないことが
やってきますが、それさえも
受け入れてしまう力が時間にはありますね。
夫が遠からずいなくなるという思いが
いつも頭の片隅にあり、自立せねばと
いう思いで必死で頑張ってきました。
いつしか、私は強くなりました。
強すぎるくらいに強くなりました。
「一人と一人ぼっちは違うってさ」
突然、夫が言いました。
「カエザルからのメッセージだよ。
一人と一人ぼっちは違うんだって。
君は一人になるかもしれないけれど
一人ぼっちには決してならないってさ。」
なるほどね・・・
一人は、ただの事実だけど
一人ぼっちは、みじめだなと思う
心の状態なのね。
カエザル、いいこと言うねえ・・・
夫がいなくなっても
カエザルがしっかり通信してくれるそうです。
私にはまだ見えも聞こえもしないんですけどね。