ヒーリングとは、病気を治すことなのか?

鍼灸院をやっているので、痛みを取るのが
私の仕事の中心になっています。
ましてや、癌や難病の方のご相談にも応じます、と
うたっているので、なんとか癌を癒したい、
健康になりたいという切実な方がほとんどです。
一般的な常識でいえば治療院は治すところでしょう。
ところが、治るより重要なことがあると
最近気付いてきたのです・・・


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3年以上前に、夫が完治無しと言われる癌になり、
実地?に体験を重ねていくと、考えが変わってきました。
肉体は「不死身」ではありません(当たり前だけど!)。
「なんとか死なないようにしてくれ!助けてくれ!」と
言われても、どうすることも出来ないことを味わい、
癌患者の家族としても、治療師としても悩み苦しみました。
私の大好きなバイロン・ケイティさんが言ったと
記憶しているのですが、物事には3つの領域があるようです。
① 自分の領域
② 他人の領域
③ 神の領域
自分自身が好き勝手に出来る範囲は、意外と小さいようです。
自分は、「自分の領域」しかコントロールできないのです。
多くの人がストレスを感じてしまう原因の一つが、
「他人の領域」をコントロールしようとするからでしょう。
夫や子供に、あれやこれや言ってしまうのは
「他人の領域」に口出ししていることなのでしょう。
「なんで、靴下脱ぎっぱなしなの?」
「勉強やったの?手を洗ったの?」
よくある会話です。これを自分が気分良くいたいために
他人を支配しようとしていると気付けたなら、
ストレスはかなり減っていくのではないでしょうか?
そして、「神の領域」ですが、これは自然災害や
生き死にのことだろうと思います。
人間の力では、どうすることも出来ないこと、
人智を超えた事柄をコントロールしようとすると
とてつもない苦しみが生まれるように思います。
先日、私が尊敬する年下の先輩Yさんのところに
お邪魔しました。アクセスバーズをしに行ったのです。
Yさんとヒーリング談義になりました。
Yさんは、こんな話をしていくれました。
「国立がんセンターにお見舞いに行ったの。
そしたら、癌患者さんばかりでしょ。
その中に、親子がいたの。
で、どっちが患者さんだろうって思ったんだけど、
すぐわかったのよ。
その母親の、子供を見つめる目が・・・
一瞬一瞬をすべて焼き付けておこうとしているかのようだった。
愛しさでいっぱいだった。」
「もし、あの子が癌にならなければ、
あんなに愛を感じることはなかったかもしれない。
普通の暮らしの中で、もっと勉強してくれたらいいのに、とか
発達がどうこうとか、いい高校、いい大学に進んで
いい会社に入ってとか・・・
そんなやり取りを繰り返していたかもしれない・・」
「病気は、今の自分を変えた方がいいよ、
本来の自分に戻りなさいってメッセージだって
サイモントンとかでよく言うけれど、私はこう思うの。
病気自体が、ヒーリングだって。」
「川幅をぐっと狭めると、水かさが増すように、
命の期限を知ると、愛が深まるの。
愛を実感することが少なかった人でも
一瞬一瞬が、愛になるの。
愛の密度が増すのよ。
生きていてくれるだけでいいって思うの。
相手のそのままを受け入れることが出来るようになるの。
どこまでもどこまでも、相手を思いやることが出来るの。
病気それ自体が、
私たちを癒してくれるヒーリングなのよ、きっと。」
病気は悪者ではない、癌はメッセンジャーだとか
悩み苦しんでいる方に、簡単に言える言葉ではありません。
病気を敵や悪と思っても、どう捉えてもいいと思っています。
私自身は、人に押し付けるつもりはありません。
しかし、夫の癌発病によって私が得たものは
苦しみだけではなかったと声を大にして言いたいのです。
自分の中にある強さを認めることが出来、
他人に対する思いやりが育まれ、
社会的にほとんど何も出来なくなった夫に対して
どこまでもどこまでも受け入れ、愛する気持ちが
芽生えてきたのは事実なのです。
自分の中に、こんなにも人を大事に思う気持ちが
あったことに驚いています。
そしてこれは、夫の癌(悪性脳腫瘍)がもたらしてくれたものでした。
夫の癌は、夫の命(肉体)を奪っていくかもしれないけれど、
幼少の頃から自己肯定感の低かった私の心を癒してくれました。
私たち夫婦の間に、たとえ肉体が無くなっても
決して失われない愛があることを教えてくれました。
その愛は強く、まさしく永遠であることも私たちはもう知っています。
病気はメッセージどころか、それ自体が「ヒーリング」なのです。
肉体を奪っていくかもしれないけれど、深い深い部分で根底から
私たちを永遠に癒してくれる可能性があるのです。
そして・・・
その愛に気付くことが、「治癒」の可能性を最大限に高めると思います。
まかりまちがって(笑)、治ってしまうことがあるかもしれません。
私の鍼灸院で目指しているものはこういうことです、今の時点では。
頼りない治療師ですね。
あ、肝心の夫自体はどうかというと・・・
まだ自分自身を完全に受け入れているわけではないようです。
様々なことが出来なくなっていく自分を許せないようです。
生きているだけでお金をどんどん使ってしまう自分を許せない。
苦しいことでしょう。
でも、私がどうにかしてあげられるものではないのです。
一生懸命愛を伝えるけれど、最後の最後は
夫自身が、自分を愛し受け入れていくしかないのです。
「何も出来なくても、生きている価値がある」と。
大きな大きなチャレンジですね。
そんな毎日をたんたんと生きる夫を、私は誇りに思っています。

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この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。