「前死体験」ーホスピスの医師が見たスピリチュアルな体験記ー
という本を読みました。
著者は、世界中で最も大きい医療センターである、メディカル・センター・オブ・ヒューストンの
一部をなす、TMCホスピスのディレクターを務める医師です。
昔から、「臨死体験」というのは聞きますが(最近もNHKスペシャルでありましたね)、
「前死体験」という言葉は、初めて聞きました。
つまり、死ぬ何日か前から死ぬ直前までの体験のことです。
著者によれば、末期患者はうつらうつらとした意識の中で
あの世とこの世を行き来し、肉体の終わりに決着をつけていくそうです。
この本は、16人の末期患者の神秘的な体験と、
その人生の振り返りや安らかな旅立ちを綴ったものです。
私は、中でも冒頭の9歳の少年マシュー君の話に釘付けになりました。
マシュー君は、網膜芽細胞腫という悪性の癌にかかり、
両目を摘出し、盲目となりました。
マシュー君は、自分の癌に「レジーナ」という名前を付け、
レジーナは自分の家族や、他の病気の子供たちを助けていると言います。
そして、自分がしなければならないことは、ただこれを受け入れることだけだと言います。
医師の見たてでは、激痛に見舞われ意識を失いとっくに死んでいてもおかしくない状態でした。
頭蓋内に急激に広がる悪性腫瘍を抱えながら、まったく痛みを感じないというふうの彼は
自らホスピスへの入院を願い出ました。
医師である著者は、9歳にもかかわらず成熟して愛情にあふれ、年齢よりもずっと賢い彼に
とうとう質問しました。
「なぜ、この病棟に入ることを願い出たんだい?」
「僕がもうすぐ死ぬことはわかっているんだ。でも家では死にたくなかった。
家族が悲しみ過ぎるから。」
「どうして、そんなことがわかるんだい?」
「天使たちがそう言ったんだよ。」
マシュー君は、金色に輝く三人の天使たちの話をしました。
「天使たちは、君が良くなるようにはできないのかい?」
「できるよ。でも天使たちがあることを見せてくれて、それで僕は病気でいることを選ぶことに
なったんだ。天使たちは、僕が望むなら良くしてくれてるって言ったんだ。
でも僕は家族を助けようとしているんだよ。その方が大切なことだから。
人のために望んで苦しむ時、その相手の人の人生が変わるんだ。
このベッドの中からでも、僕は本当にたくさんの人を助けることができるんだよ。」
マシュー君は、離婚や彼の癌で神を信じなくなってしまった彼の母親を癒すために
自ら、病気が治らないということを選んだのだと言いました。
そして、彼は「天使がやってくる」と言った月曜の朝、
「願いが叶った。」と言いつつ、亡くなります。
彼の家族が、マシュー君を神に返すという心の準備ができ、癒されたからです。
私もそんなふうに思ったことがあります。
夫の不治の癌(悪性脳腫瘍)は、
私が、自分を本当に愛せるようになるためにあるのではないかと。
生まれてくる前に、天国で二人で計画したような気がします。
夫「54歳くらいで、悪性脳腫瘍になるよ、僕が。」
私「え~、それはたいへんだよ!大丈夫?私が悪性脳腫瘍になろうか?」
夫「平気、平気!僕がなるよ。そして君は、自分を愛することを学ぶんだ!」
私「それは学びたいけど、あなたはそんな病気になって大丈夫?」
夫「平気、平気!チャレンジにわくわくする!あっ僕もう、生まれるから。
先に地球に行ってるね~。バイバーイ。また、後で会おうね~。」
私「あー待ってー。行っちゃった・・・私たち、たいへんな人生だな。でも、がんばろう!」
そんなところでしょうか?
生まれてくる前は、たいへんな人生のチャレンジにわくわくするのかもしれません。
でも実際生まれてみると、その試練や困難に悲鳴をあげてしまうのです。
そして・・・死んでみると・・・人生の総括をするのかもしれません。
さあて、私たち夫婦は、どうなのでしょうか?
「ちぇっ、もっと頑張れたのにな!」なんてことのないようにしたいものです。