遺言と葬儀の予約

私は、すっかりまいってしまっていた。
もう駄目だ。夫は遅かれ早かれ死んでしまう。


最初の手術の段階で、知能低下などの重篤な後遺症が出る可能性もあった。

その頃の私は、冷静に見えても(見えなかったかな?)パニックだったんだろう。

夫の入院前に、杉並公証役場で公正証書を作成した。
つまり、遺言書だ。

夫には腹違いの兄弟たちがいて、交流もない。私たち夫婦には子供がいない。
遺言がなければ、もめる可能性大なのだ。

公正証書(遺言書)は立会人二人に5000円ずつの謝礼を用意して、簡単に作成できた。
(神様ー、私一人じゃ、何にもできないよー。)

夫が、まともでいるうちに片づけてもらうことが山積みだった。

葬儀の予約と永代供養のお墓も申し込んだ。

少し安心した。

もちろん、死んでほしいわけじゃないんだ。

いつ死んでもいい準備をしただけだ。

これから夫婦二人で、全力で生きるんだ!

闘いの狼煙を上げたんだ!

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この記事を書いた人

福井てるこ

20代はプロの舞台俳優として全国を回り、33歳から鍼灸の道に入る。