私は、すっかりまいってしまっていた。
もう駄目だ。夫は遅かれ早かれ死んでしまう。
最初の手術の段階で、知能低下などの重篤な後遺症が出る可能性もあった。
その頃の私は、冷静に見えても(見えなかったかな?)パニックだったんだろう。
夫の入院前に、杉並公証役場で公正証書を作成した。
つまり、遺言書だ。
夫には腹違いの兄弟たちがいて、交流もない。私たち夫婦には子供がいない。
遺言がなければ、もめる可能性大なのだ。
公正証書(遺言書)は立会人二人に5000円ずつの謝礼を用意して、簡単に作成できた。
(神様ー、私一人じゃ、何にもできないよー。)
夫が、まともでいるうちに片づけてもらうことが山積みだった。
葬儀の予約と永代供養のお墓も申し込んだ。
少し安心した。
もちろん、死んでほしいわけじゃないんだ。
いつ死んでもいい準備をしただけだ。
これから夫婦二人で、全力で生きるんだ!
闘いの狼煙を上げたんだ!